COPD
COPD

COPDは文字通りシーオーピーディーと読みます。Chronic Obstructive Plumonary Diseaseの略で日本語では慢性閉塞性肺疾患と言います。COPDは主にタバコなどの有害物質によって肺に慢性的な炎症が起き、その結果として空気の通り道である気道が狭くなったり(=慢性気管支炎)、空気を取り込む肺胞が壊れてしまう(=肺気腫)病気です。慢性気管支炎と肺気腫がさまざまな割合で混在するため患者さんによって症状の程度が異なりますが、進行すると大多数の患者さんで息切れや呼吸困難が生じ日常生活に大きな影響を与えます。

(Barnes PJ. et al.NEJM;343:269-280,2000より改変)
疫学調査によれば、40歳以上の日本人のうち約530万人がCOPDに罹患していると言われますが、そのうち約90%の人はCOPDと診断されていません(Fukuchi Y. et al. Respirology;9;459-465,2004)。診断されていないCOPDの患者さんは高血圧・高脂血症・糖尿病などで通院中の患者さんに多く存在していることが分かっています。これらの疾患があって喫煙歴がある方、咳・痰・息切れなどが気になる方は一度呼吸機能検査を受けることをお勧めします。
以前はほとんどがタバコが原因と言われていましたが、近年ではタバコを吸ったことがないのに肺機能が低下している人が比較的多いことが分かってきました。
| 分類 | 詳細 | |
|---|---|---|
| 遺伝的要因によるCOPD(COPD-G) | α₁-アンチトリプシン欠乏症(日本ではまれ) | |
| 肺の発達異常によるCOPD(COPD-D) | 早産や低出生体重児など | |
| 環境要因によるCOPD | タバコ煙によるCOPD(COPD-C) | ・喫煙、受動喫煙によるタバコ煙への曝露 ・電子タバコ |
| バイオマスや大気汚染によるCOPD(COPD-P) | 大気汚染、山火事などの煙、職業性の曝露 | |
| 感染症によるCOPD(COPD-I) | 小児期の感染症、結核など | |
| COPD & 喘息(COPD-A) | 気管支喘息合併、特に小児喘息 | |
| 原因不明のCOPD(COPD-U) | ||
(GOLD 2025, p20 Fig 1.2 available from www.goldcopd.orgより改変)
上の表はCOPDの国際ガイドラインに記載されたCOPDの分類です。COPDになる患者さんは必ずしも喫煙者だけでなく受動喫煙、大気汚染や紛じん、出生時の低体重や小児期の喘息・感染症などが原因になりうると言われています。
最初は風邪と見分けがつきにくいこともありますが、風邪でもないのに長引く咳や痰が出る方は早めの受診と肺機能検査をおすすめします。

(一般社団法人日本呼吸器学会:COPD診断と治療のためのガイドライン第5版より改訂)
喫煙者COPD患者さんの最も重要な治療は禁煙です。喫煙を続ける限り肺の機能低下が大きく進みます(上の図参照)。御自分で禁煙できない方に対して当院では禁煙外来を設け、薬物を用いた禁煙治療も行っています。
COPDの治療では、症状をやわらげ、息切れを改善し、増悪を防ぐことが大切です。その中心となるのが「吸入薬」です。吸入薬は直接薬剤を吸い込むことで気管支や肺に薬が直接届きます。したがって内服薬と比べて少ない量で効果を発揮でき、全身への影響が少ないため副作用も少なく、効率よく治療できるのが特徴です。COPD患者さんは症状の強さや増悪のしやすさなどに応じて、いくつかの吸入薬を組み合わせて治療します。
①長時間作用型抗コリン薬(LAMA)
COPD治療の中心となる薬剤で気管支が収縮して狭くなるのを抑えます。1回の吸入で作用が12~24時間持続します。閉塞隅角緑内障の患者さんには原則使用できません。
②長時間作用型β2刺激薬(LABA)
気道の筋肉を弛緩させて気管支を広げます。こちらも1回の吸入で作用が12~24時間持続します。副作用として脈が速くなる、手指のふるえなどがみられることがあります。
③吸入ステロイド(ICS)
喘息患者さんと異なりCOPDの患者さんは肺に菌が付きやすいため吸入ステロイドの使用は喘息やアレルギーの関与が疑われた場合など限定的に使用します。使用後も定期的なレントゲン撮影を行うなど慎重に経過観察していきます。
④生物学的製剤
①~③の吸入薬を使用しても病気の進行が抑えられないようなアレルギー系の関与が疑われる患者さんに使用します。現在使用できる薬剤は1種類(デュピクセント)のみです。
COPDの患者さんにとっては「少しでも動く」ことがとても大切です。座位の時間が長ければ長いほど生活の質(QOL)の低下や入院のリスク・余命に影響することが分かっています (Waschki B et al. Chest, 140(2):331-342, 2011)。運動やストレッチで筋力と持久力を保つことにより呼吸が楽になり日常生活の質も改善されます。
患者さんの重症度によって歩ける歩数は異なりますが、1日3,000~5,000歩(無理なく歩ける範囲)は歩くことが推奨されています。また、他の目安として今よりも+500~1,000歩/日を目指すという考え方もあります。歩いていて苦しくなれば休んで構いません。万歩計やスマートウオッチで歩数を測定したり、散歩コースを考えて楽しみながら歩くなどのルート設定はモチベーションの向上につながりますのでぜひ試してみてください。
息切れがひどくてなかなか歩けないという方は「座ったまま」「寝たまま」でもできる筋力トレーニングがおすすめです。上肢・下肢・体幹の筋力トレーニングを”ややきつい”と感じる程度で行うのが良いとされています。できるだけ口すぼめ呼吸や腹式呼吸を使って呼吸と運動のタイミングを合わせ、息切れがないように行います。患者さんの重症度によってはパルスオキシメーター(酸素測定器)を使用しながら行った方が安全な方もいます。
有酸素運動や筋力トレーニングだけでなく、家事や身の回りの動作などすべてが運動ですので少しでも動く意識を持つことがとても大切です。
感染症にかかることで肺機能低下や入院のリスクが高まります。予防接種はCOPD患者さんの病気の進行を抑える重要な手段です。現在、有効性が示されている主な予防接種は以下になります。
※当院ではいずれのワクチンも扱っています。
COPD患者さんはCOPDでない方と比較して呼吸により多くのエネルギーを消費するため、筋肉や体力が消耗しやすく体重が減少していきます。エネルギーを十分に摂ることが重要ですが、”ただたくさん食べれば良い”わけではありません。COPDの方には、呼吸の負担を減らしつつ体力を維持するための食事の工夫が必要になります。
栄養指導・治療は当院にご相談ください
当院では、管理栄養士によるオンラインでの個別栄養指導を行っております。COPDでやせてしまった患者さんの体力や体重を維持するための食事療法をご希望の方はぜひ一度ご相談ください。
COPDは完治が難しい病気ですが、進行すると日常生活に大きな影響を及ぼすため適切な管理が必要です。当院ではCOPDの診療において、禁煙支援・吸入薬治療・ワクチン接種・栄養指導などを組み合わせ、患者さん1人ひとりの状態に合わせた治療を行っています。
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