高尿酸血症
高尿酸血症

当院では、高尿酸血症および痛風に対する診療も行っています。高尿酸血症は自覚症状がないまま進行することが多く、放置すると尿路結石や痛風発作のみならず腎機能障害や心臓疾患などの合併症を引き起こすリスクがあります。痛風は一度なると繰り返すため日常生活に影響を及ぼします。健康診断や血液検査で尿酸値が高めと言われた方は症状がなくても早めの受診をおすすめします。
高尿酸血症とは、血液中の尿酸濃度(尿酸値)が高くなる状態を指します。血液検査で尿酸値が7.0mg/dL以上あると「高尿酸血症」と診断されます。尿酸はもともとプリン体という物質が分解されてできる老廃物です。1日に体内で産生される量はおよそ700mgで、排泄される尿酸もほぼ同じ(3/4が腎臓、1/4が便や汗)です。体内で作られる量と排泄される量のバランスが崩れると血液中に蓄積してきます。尿酸が過剰に産生される原因は食べ過ぎなどで、排泄される尿酸が減少する原因は腎臓の機能が悪い場合などです。このバランスがくずれることで尿酸が体内に蓄積し高尿酸血症となります。
尿酸は水に溶けにくい性質のため濃度が高くなると結晶化しやすく、関節に沈着すると痛風発作、腎臓に沈着すると腎機能障害などを引き起こします。また高尿酸血症が動脈硬化や脳血管疾患、心筋梗塞などのリスク因子になることも報告されています(W Zhang, et al: J Atheroscler Thromb. 23 (6): 692‐703, 2016)。
高尿酸血症には主に以下の2つのタイプがあります。
尿酸排泄低下型
尿酸が十分に体外に排泄されず、血液中に蓄積されるタイプです。遺伝体質、腎機能低下、肥満、脱水、アルコール摂取などが原因となります。
尿酸産生過剰型
体内で過剰に尿酸が作られてしまうタイプです。プリン体を多く含む食品(レバー、魚卵、干物など)の摂取、激しい無酸素運動、白血病などの疾患が原因となります。
どちらか一方ではなく、この2つのtypeが重なって高尿酸血症を引き起こす患者さんも沢山います。
高尿酸血症そのものには明確な自覚症状がないことが多く、知らず知らずのうちに進行してしまいます。進行した場合に起こりうる症状や疾患をまとめます。
エネルギーの適正化
肥満やメタボリックシンドロームは尿酸値上昇の原因になります。1日の摂取エネルギーは標準体重×25~30kcalを目安にします。
プリン体の摂取制限
レバー、干物、魚卵、アルコールなどプリン体を多く含む食品は控えめにします。プリン体は水に溶けるため煮汁等は飲まないようにします。1日あたりの摂取量は400mg以下が目安です。
アルカリ化食品の摂取
尿をアルカリ性に保つと尿酸が排出されやすくなります。野菜、海藻、きのこ、芋類、牛乳、緑茶などを積極的に摂ることを心掛けます。
水分摂取
尿酸を排出するためには十分な水分が不可欠です。1日2Lを目標に、こまめに水や麦茶をとるようにしましょう。糖分の多い清涼飲料やジュースは控えてください。
アルコール制限
アルコールは尿酸を作り出し、排泄を妨げる働きがあります。とくにビールはプリン体が多く痛風リスクが高まります。飲酒する場合は、蒸留酒やプリン体カットの商品を選び、1日あたりの目安(純アルコール約20g)を守りましょう。
当院では、管理栄養士によるオンラインでの個別栄養指導を行っており、血液検査の結果や生活習慣に合わせた最適な食事プランをご提案しています。食生活の改善は数値を整えるだけでなく、将来の動脈硬化や心筋梗塞などのリスクを減らすことにもつながります。高尿酸血症に対する食事療法をご希望の方、食生活の見直しをしたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
適度な運動を続けることで肥満や内臓脂肪を減らし、尿酸値を下げやすい体づくりにつながります。おすすめの運動はウォーキングやストレッチ、軽いジョギング、自転車などの有酸素運動です。息が少し弾む程度の強さで、1回20~30分、週3~5回を目安に行うと効果的です。運動は一度きりでは効果がなく、長く続けることで尿酸値の安定に役立ちます。
一方で、短距離走や強い筋トレなどの激しい無酸素運動は注意が必要です。無酸素運動では体内で乳酸が多く作られ、尿酸の排泄が妨げられるため、一時的に尿酸値が上がってしまうことがあります。そのため、高尿酸血症の方は無理な運動よりも、軽めで持続できる運動を心がけることが大切です。また、運動の前後にはしっかり水分をとることも忘れないでください。
尿酸値が高くても、すぐに薬が必要になるわけではありません。高尿酸血症と診断されても尿酸値が8.0mg/dL未満で、これまでに痛風の発作を起こしたことがない方であれば、まずは食生活など生活習慣の改善をまず行います。一方で、尿酸値が8.0mg/dLを越えてくると合併している病気(高血圧、腎臓病、糖尿病など)によっては尿酸を下げる薬を開始した方が良いとされていますが、当院ではまずは食事療法など生活習慣の改善を優先します。
ただし尿酸値が9.0mg/dL以上になると、痛風発作や尿路結石、腎臓への負担などの合併症を起こすリスクが非常に高くなるため、この場合は薬による治療を開始し、併せて生活習慣の改善も行っていきます。
尿酸値は6.0mg/dl以下を目標にします。

(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 診断と治療社、持田製薬HPより)
尿酸を下げる薬には「尿酸の生成を抑える薬」と「尿酸の排泄を促す薬(尿細管からの再吸収を抑える)」があります。痛風発作が出ている最中は急激な尿酸値の変動がさらなる発作を誘発するため, 尿酸を下げる治療はこの時期は控えNSAIDs(消炎鎮痛剤)などの炎症を抑える鎮痛薬が優先されます。痛風発作後の治療薬として、当院では以下の理由でフェブリクを最初に処方いたします。
ただし、フェブリクで効果が不十分であれば他の薬剤も使用します。
当院では、患者さん1人ひとりの生活習慣や体質に応じて治療しています。血液検査の結果をもとに、生活改善のアドバイスから薬物療法まで一貫してサポートいたします。
このような方はぜひ一度ご相談ください
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