SASの治療について
SASの治療について

睡眠時無呼吸症候群の治療は閉塞が生じる部位・病態(閉塞性/中枢性)・重症度(無呼吸・低呼吸の回数)・併存疾患・解剖学的特徴を総合的に評価して決定されます。代表的な治療方法にはCPAP、口腔内装置(いわゆるマウスピース)、手術療法があります。
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の 第1選択治療 として国際的にも推奨されている治療で、日本ではAHIが20以上(あるいは簡易検査REIで40以上)の方に保険適応で使用する事ができます。睡眠中に鼻から空気を送り込み、のどの空気の通り道がつぶれないようにします。最も効果的な治療法であり、多くの患者さんのAHI(1時間あたりの無呼吸低呼吸の回数)が正常値(AHI= 5以下)になります。
無呼吸の改善だけでなく、長期的なQOLの観点からも非常に重要な治療です。
当院では、主に以下の5種類のCPAP機器を採用しています。

Air Sence

Dream Station

Murata CPAP

Sleep Style

Air mini
これらの機器はいずれも大手医療機器メーカーで信頼や実績があり、機器のアルゴリズムが公開されています。機器の特徴を把握することで、より細かな調整が可能になります。初めてCPAPを使う患者さんには生活環境や睡眠検査の結果をもとに最適な機種やマスクをご提案します。
歯科医院でオーダーメイドの口腔内装置を作製し、就寝時に装着します。下顎を前方へ誘導することで舌の落ち込みを防ぎ、軟口蓋のスペースを広げ気道閉塞を軽減します。CPAPの適応とならない軽症~中等症の閉塞性睡眠時無呼吸の方に効果が認められます。
電源等も不要です。
保険で作製した口腔内装置の自己負担は3割で約1万円~1.5万円程度(歯科医院により異なります)です。
口腔内装置を装着してCPAPをすることでCPAPの必要な圧力(風の強さ)を減らすことができます。
いびきの軽減の他、歯ぎしりによる歯の保護にも役立ちます。
軽症~中等症の患者さんでも顎の形・歯並び・肥満度などにより、十分改善しない方が約3割程度います。作製後はマウスピースを装着した状態で再度睡眠検査を受け効果を確認すうことが重要です。当院で検査を受けることができます。
特に使用開始直後は、唾液が増える・歯ぐきの痛み・顎関節の違和感などが出ることがあります(通常は徐々に慣れます)。また長期的には噛み合わせが少し変わる可能性もあり、定期的な歯科医院でのチェック・マウスピースの調整が必要となることがあります。
患者さんの口腔状態によって歯科医院でマウスピースが作成できない可能性があります。
実際に歯科医院にかからないと作製できるかわからない事も多いので、マウスピースを御希望の場合は、ひとまず歯科の受診をお勧めしています。CPAPに比べるとAHI改善効果は弱いものの、携帯性が高く、睡眠医療ガイドラインでも重要な治療選択肢とされています。マウスピース治療は医科と歯科の連携が不可欠であり、当クリニックでは積極的に医科歯科連携を行っています。
口蓋扁桃肥大やアデノイドに対する摘出術は特に小児の閉塞性睡眠時無呼吸の治療として大きな効果が期待できますが、鼻中隔弯曲症やアレルギー性鼻炎に対する鼻の手術などについては、鼻閉や主観的な眠気の改善が認められますが睡眠時無呼吸症候群への改善効果は乏しいと報告されています(Hsueh-Yu. American Journal of Rhinology & Allergy;25(1):45-9,2011)。
これらの手術はいびきに対しての効果は認められますが、舌がのどの奥におちこむ舌根型の閉塞性睡眠時無呼吸には効果がありません。また重症や肥満の患者さんにも効果が不十分で、術後合併症(述部瘢痕や開鼻声など)のリスクもあります。
個別の報告では効果があったとするレポートも散見されますが、いくつかの論文をまとめて解析した結果では睡眠時無呼吸症候群に対する効果は乏しく、米国睡眠学会 / 日本睡眠学会とも睡眠時無呼吸症候群に対する治療としては「推奨しない」と声明が出されています。
ただ一方でUPPPを受けたことでCPAPが使いやすくなり、継続率が向上したという報告もあります。この治療を希望される場合は良く相談された上で受けるか結論を出して頂くのが良いと思います。
上顎・下顎全体を前方移動して、咽頭腔全体を広げる根治的な手術です。主に顎の形が原因で睡眠時無呼吸症候群になっている方に適応があります。手術療法の中で最も成功率が高い(80~90%)ですが、体への負担がすごく大きいため慎重に検討する必要があります。
小児OSAの原因の大半は扁桃・アデノイド肥大であり、改善率も70-90%と高く小児の睡眠時無呼吸症候群の第1選択治療になります。睡眠障害は成長・発達へ悪影響があるため、小児の睡眠時無呼吸症候群は積極的に治療を検討すべきです。
舌を前方へ動かす筋肉を支配する神経(舌下神経)を電気で刺激して、睡眠中の舌根部の虚脱を防ぐ治療です。日本でも数年前から保険適応になっている新しい治療です。HGNSの適応になった場合、AHIが50%以上改善する確率が80%と報告されています。
※DISEは「薬で軽く眠ってもらい、本当に眠っている時の“気道の閉じ方”を内視鏡で直接調べる検査」です。いびきや無呼吸は寝ている時にしか起こらないので、起きている時の内視鏡では本当の閉塞パターンが分かりません。そのため薬を使って寝てもらいながら内視鏡で閉塞パターンを確認します。その際に、軟口蓋が全周性に虚脱するようだといくら舌を前に出しても効果がないため適応外となります。
DISEは実際にHGNSをやっている施設へ紹介してからの検査になりますので、紹介先の病院でHGNSの適応外と言われることもしばしばあります。
睡眠時無呼吸症候群の治療は、心血管疾患・生活習慣病予防・QOLの改善に直結するため重要です。当院では、睡眠医療の専門的視点から、患者さん1人ひとりの病態に合わせた最適な治療を提案いたします。
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